【生成AI時代の教育意識】AIあっても語学力は必要 語学力より計算力を重視する傾向も

2025.10.8 公開

概要


公益財団法人 スプリックス教育財団(本部:東京都渋谷区/代表理事:常石 博之)は、「基礎学力と学習の意識に関する保護者・子ども国際調査2025」を実施しました。今回の第2回報告では、特に 「外国語を学ぶ意欲」 に焦点を当てます。調査結果のポイントは以下のとおりです。

調査結果のポイント

(1)『生成AIがあっても語学力は必要だ』と考える子ども・保護者が多数派
『生成AIがあっても外国の言語を話す能力は必要だ』を肯定する割合が子ども・保護者ともにいずれの国でも6割を超え、生成AIがあっても語学力の必要性を認識していることがわかりました。


(2)「語学力」よりも「計算力」のほうが必要性が高いと認識
ほとんどの国で『外国の言語を話す能力』よりも『生成AIがあっても基本的な計算ができる能力は必要だ』を肯定する割合が高く、世界的には計算力のほうが重視されていることが示されました。また、英語がその国で主要言語か否かが、語学力の必要性の認識に影響している可能性も示唆されました。


(3)基礎学力の重要性を子どもは十分に認識していない可能性
『基本的な計算ができる能力』『外国の言語を話す能力』のいずれも、子どものほうが必要性の認識が低く、勉強することや基礎学力の重要性を、保護者と比べて子どもは十分に認識していない可能性が示唆されました。

調査の背景


公益財団法人スプリックス教育財団(本部:東京都渋谷区/代表理事:常石 博之)は、基礎学力に対する意識の現状を把握することを目的に 『基礎学力と学習の意識に関する保護者・子ども国際調査2025』 を実施しました。今回の第2回報告では、特に 「外国語を学ぶ意欲」 に焦点を当てます。

生成AIの普及により、誰もが自然な英語や多言語翻訳を手軽に利用できる一方で、「学ぶ意欲そのものが薄れているのではないか」という懸念があります。そこで本報告では、

(1) 「外国の言語を話す能力」 (以下、語学力) と、「基本的な計算ができる能力」 (以下、計算力) との必要性の認識の違い

(2) 保護者と子どもにおける「語学力」の必要性の認識の差異

について国ごとに比較し、外国語を学ぶ意欲の現状を探りました。

調査方法

調査テーマ基礎学力と学習の意識に関する保護者・子ども国際調査2025
調査時期2025年4月~7月
調査対象世界8か国の小学4年生および中学2年生相当の子どもと、 その保護者(対応関係あり) ※各学年で7か国。下の表を参照ください。
調査方法(1) インターネットパネル調査 (2) 調査参加校の教室および自宅での実施
調査主体スプリックス教育財団が以下に委託して実施 (1) 株式会社クロス・マーケティング (2) 株式会社スプリックス

国別の調査人数一覧

国別の調査人数一覧
※ 2025年8月8日時点での回収数
留意事項
・ 教室・自宅での実施(インドネシア、ネパール、日本)は、回答者はランダムに抽出されたものではありません。便宜上「国名」として記載していますが、 特定の地域や学校の結果であることにご留意ください。
・ 本文では小学4年生の結果を中心に紹介しています。中学2年生の結果は、添付のPDFをご参照ください。
・ 有効回答数が30組以上のグループのみ分析対象としました。
・ 本リリースに関する内容をご掲載の際は、必ず「スプリックス教育財団調べ」と明記してください。

調査結果


(1) 『生成AIがあっても語学力は必要だ』と考える子どもが多数派

図1(a)は、「計算力」や「語学力」が必要かどうかを7か国の小学4年生(以下、子ども)に尋ねた結果です。7か国すべてで『生成AIがあっても外国の言語を話せる能力は必要だ』を肯定する割合が6割を超え、 生成AIがあっても語学力の必要性を認識 していることが示されました。なお、設問の冒頭で『生成AIを使えば、 いろいろな問題を解決できます。また、生成AIは海外の言語で書かれた文章を訳してくれます』と前置きしています。

基礎学力の必要性アンケート(生徒)

一方で、 世界的には「計算力」のほうが「語学力」よりも必要性が高い と認識している傾向がみられました。図1(b)に「計算力」と「語学力」それぞれを必要だと回答した割合の差を示します。アメリカやイギリスでは、その差が10ポイントを上回り、計算力をより重視していることがわかりました。一方、それ以外の国々では両者の差は5ポイント以下にとどまりました。特に日本やフランスでは「計算力」よりも「語学力」のほうが必要と回答する子どもがわずかに多い結果となりました。この結果は、 英語がその国で主要言語か否かが、外国語学習の必要性の認識に影響を与えている可能性 を示唆します。



(2) 保護者は「語学力」より「計算力」を重視

図2(a)に同様の質問をその保護者に尋ねた結果を示します。7か国すべてで『生成AIがあっても外国の言語を話せる能力は必要だ』を肯定する割合が7割を超え、子ども以上に 保護者は生成AIがあっても語学力の必要性を認識 していることが示されました。

基礎学力の必要性アンケート(保護者)

また、フランスを除くすべての国で 「計算力」のほうが「語学力」よりも必要性が高いと認識している 傾向がみられました。図2(b)に「計算力」と「語学力」それぞれを必要だと回答した割合の差を示します。アメリカやイギリスでは、その差が10ポイントを上回り、子どもと同様に計算力をより重視していることがわかりました。

日本では「計算力」が必要だという認識が「語学力」よりも5.7ポイント高く、日本の保護者は子どもに必要な学力として「語学力」よりも「計算力」を重視していることが示されました。一方、図1(b)で見たように日本の子どもは「語学力」のほうが必要との回答が多く、 日本の子どもと保護者の認識にはギャップ が見られました。



(3) 子どもは基礎学力の重要性を、保護者と比べて十分に認識していない可能性

図3(a)(b)に「外国の言語を話せる能力」の必要性について保護者と子どもの回答を比較しました。ネパールを除いた6か国で、 保護者のほうが子どもよりも「語学力は必要」と回答 しました。

生徒と保護者の比較

第一回目の調査報告では、 保護者のほうが子どもよりも「計算力は必要」と回答 したことを示しました。「計算力」も「語学力」も子どものほうが必要性の認識が低く、 勉強することや基礎学力の重要性を、保護者と比べて子どもは十分に認識していない可能性 が示唆されます。


まとめ


7か国の子どもと保護者に「外国の言語を話せる能力」の必要性について尋ね、「基本的な計算ができる能力」の必要性と比較しました。その結果、 いずれの国でも過半数が「生成AIがあっても外国の言語を話せる能力は必要」 と認識していることがわかりました。また、 世界的には「基本的な計算ができる能力」のほうが「外国の言語を話せる能力」よりも重要性が高いと認識している 傾向がみられました。

しかし国別にみると、アメリカやイギリスでは「基本的な計算ができる能力」の重要性の認識が比較的高く、日本やフランスでは同程度か「外国の言語を話せる能力」を重視する回答が上回る結果となりました。 英語がその国で主要言語か否かが、外国語学習の必要性の認識に影響を与えている可能性 が示されました。

また、「基本的な計算ができる能力」「外国の言語を話せる能力」のいずれも保護者の方が子どもよりも「必要」と回答しました。 勉強することや基礎学力の重要性を、保護者と比べて子どもは十分に認識していない可能性 が示唆されました。

これらの結果は、今後、生成AIのさらなる普及に伴い変化する可能性があります。また「基本的な計算ができる能力」の概念は国によってイメージが異なる可能性があるため、今後の調査では、(1)その捉え方の国際差と、(2)生成AIの普及に伴う意識の変化の双方を検証します。

なお、 付録に主要言語と意識に関する議論や、中学生を対象とした結果も掲載 していますので、ぜひご覧ください。本報告は、「基礎学力と学習の意識に関する保護者・子ども国際調査2025」に基づく第二回目の報告です。今後も継続的に調査結果を公表し、国や学年ごとの特徴を明らかにしていく予定です。

調査の詳細は下記よりご確認ください。

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