日本の保護者「プログラミングは大切」77% 「計算力」「読解力」は98%以上 海外との差も明らかに

2025.10.29 公開

概要


公益財団法人 スプリックス教育財団(本部:東京都渋谷区/代表理事:常石 博之)は、「基礎学力と学習の意識に関する保護者・子ども国際調査2025」を実施しました。今回の第3回報告では、特に基礎学力としての 「プログラミング」 に焦点を当てます。調査結果のポイントは以下のとおりです。

調査結果のポイント

(1)日本では保護者の77%が「プログラミングは大切」と認識するも、計算力と読解力をより重視する傾向
日本の小中学生および保護者は「プログラミングをできるようになることは大切だと思う」に肯定的な回答が多数派でした。しかし、保護者の77%が「プログラミングは大切」に肯定する一方、「計算力は大切」「読解力は大切」に98%以上の保護者が肯定的で、「計算力」「読解力」を重視する傾向が見られました。


(2)国際的にはプログラミングを重視する保護者が95%以上の国も
他国の調査結果と比較すると、「プログラミングをできるようになることは大切だと思う」に対してエクアドル、ペルー、エジプト、インドネシアの保護者は95%以上が肯定的で、日本以上にプログラミングを重視する傾向がありました。

調査方法

調査テーマ基礎学力と学習の意識に関する保護者・子ども国際調査2025
調査時期2025年4月~8月
調査対象世界8か国の小学4年生および中学2年生相当の子どもと、その保護者 ※下の表をご参照ください。
調査方法調査参加校の教室および自宅での実施
調査主体スプリックス教育財団が株式会社スプリックスに委託して実施

国別の調査人数一覧

国別の調査人数一覧
※ 2025年9月10日時点での回収数
留意事項
一部の国では対象学年の前後を含みます が、本報告書内では便宜上「小4」「中2」と表記します。(ペルー:小4~5相当、エジプト:小3~小5相当)
・回答者はランダムに抽出されたものではありません。便宜上「国名」として記載していますが、 特定の地域や学校の結果であることにご留意ください。
・有効回答数が30件以上のグループのみ分析対象としました。
・本リリースに関する内容をご掲載の際は、必ず「スプリックス教育財団調べ」と明記してください。

調査結果


(1)日本では保護者の77%が「プログラミングは大切」と認識するも、計算力と読解力をより重視する傾向

「プログラミングをできるようになることは大切だと思う」 かどうかを 「計算力」「読解力」 と比較して小学4年生(以下小4)・中学2年生(以下中2)の子どもおよび保護者に尋ねました。図1の日本の回答について見ていきます。

日本の生徒・保護者へのプログラミングアンケート
図1. 「勉強に関する以下の文章について、どの程度そう思いますか」に対する、日本の子ども(小4)/子ども(中2)/保護者の回答比較

日本の小4・中2・保護者は、「プログラミングをできるようになることは大切だと思う」について、「そう思う」または「ややそう思う」という肯定的な回答をした人が多数派でした。しかし、保護者の77.1%が「プログラミングは大切」に肯定する一方、「計算力は大切だと思う」には98.3%、「読解力は大切だと思う」には99.7%が肯定的でした。小4・中2も同様の傾向で、日本では「プログラミング」を重視する人は多数派ですが、「計算力」や「読解力」をより強く重視していることがわかりました。

また、小4と中2で比較すると、中2のほうが肯定的な回答をする割合が低い傾向にありました。これは、学年が上がるごとに基礎的な学力に懐疑的な意見が多くなっている可能性を示唆しています。



(2)国際的にはプログラミングを重視する保護者が95%以上の国も

では、この傾向は他の国ではどうでしょうか。同様の調査を行った5か国(エクアドル、ペルー、エジプト、インドネシア、ネパール)の結果と比較しました。各国の保護者が「計算力/読解力/プログラミングは大切だと思う」に「そう思う」または「ややそう思う」と肯定的な回答をした割合を比較した結果を図2に示します。

世界の生徒・保護者へのプログラミングアンケート
図2. 調査対象各国において「勉強に関する以下の文章について、どの程度そう思いますか」に対して、「そう思う」または「ややそう思う」と肯定的な回答をした保護者の割合比較

「計算力」や「読解力」は日本を含むすべての国で90%以上の保護者が「大切」だと回答しました。一方、「プログラミング」については、エクアドル、ペルー、エジプト、インドネシアの保護者は「計算力」や「読解力」と同様に95%以上が「大切だと思う」に肯定的な回答をした一方で、ネパールの保護者は84.8%、日本の保護者は77.1%が肯定的な回答を示しました。

多くの国で「計算力」「読解力」と同様に「プログラミング」を重視している一方で、一部の国では「プログラミング」はそこまで重視されておらず、特に日本はその割合が比較的低いということがわかりました。

なお、この傾向は、小学4年生、中学2年生でも同様でした。詳細なグラフについては添付のPDFをご参照ください。



まとめ


今回は、「プログラミング」の大切さについて子どもと保護者に尋ね、「計算力」「読解力」さと比較しました。その結果、いずれの国でも「プログラミングは大切」だとする回答が多数派ではあるものの、日本を含む一部の国では「計算力」「読解力」ほどは重視していない傾向が見られました。

日本では2020年より小学校でプログラミング教育が必修化され、2025年の大学入学共通テストの出題科目に「情報I」が設定されるなど、プログラミング教育の充実が図られています。しかし、この結果は、日本でプログラミング教育を進めるにあたり、意欲的ではない層が一定数いることを示唆します。

プログラミングに関する意欲は、今後のプログラミング教育の普及や、生成AIのさらなる普及や発展に伴い変化する可能性があります。今後の調査では、(1) 各国におけるプログラミング教育の目的と、(2) プログラミング教育や生成AIの普及に伴う意識の変化の双方を検証します。

本報告は、「基礎学力と学習の意識に関する保護者・子ども国際調査2025」に基づく第三回目の報告です。今後も継続的に調査結果を公表し、国や学年ごとの特徴を明らかにしていく予定です。

調査の詳細は下記よりご確認ください。

調査レポート全文をダウンロード(PDF)