スプリックス教育財団は基礎学力に関する10か国国際調査を実施教育環境が整備されている日本に比べ、保護者の関わりやICTの整備状況などに課題があり「8+5が暗算できない」国も
概要
公益財団法人スプリックス教育財団(本部:東京都渋谷区/代表理事:常石 博之)は2026年4月から8月にかけて、日本を含む10か国の小中学生とその保護者・学校の先生 を対象に 「国際基礎学力調査2026」 を実施しました。本日、その速報サマリを発行いたしましたのでご報告します。

詳細については、添付のPDFをご参照ください。結果報告PDFはこちら。
以下では、当報告書のハイライトをご報告します。
調査の概要
主な目的
- 世界の児童・生徒の基礎学力の把握:国際比較をし、基礎学力・特に計算力の実情を把握
- 世界の児童・生徒の教育環境の現状の把握:国際比較をし、教育環境の実情を把握
- 各国の教育環境の改善に役立つ新たな知見の獲得:計算力と教育環境や意識の相関を分析
- 基礎学力の現状の把握:国際基礎学力検定TOFASの計算テスト
- 教育環境の現状の把握:子ども・保護者・教員の三者への意識調査
- 項目:家庭での学習方法、保護者の関与、教員の指導体制、客観的指標の活用、基礎に関する文化
- 対象学年:小4・小5・中2・中3
- 「基礎学力」への特化:特に計算力に注目することで、学力の根底である基礎学力の定着状況と課題を明確にします。
- 三者への意識調査:児童・生徒だけでなく、保護者や教員も調査対象としています。成績向上に向け、保護者の関与や学校環境の改善といった具体的な糸口を模索します。
調査の背景
日本は PISA2025で OECD諸国の中でトップクラス の成績を出すなど、国際的にも高い学力が認められています。ただし、低得点層の割合が増加している ことが同じPISA2025の結果から指摘されています。日本においても基礎学力が不十分である生徒も存在するのではないでしょうか。他方、グローバルサウス は現在著しい発展を遂げており、21世紀の地球経済に大きな影響を与えています。その一方で、その中には学力の根底となる基礎学力に不安を抱えている国も少なくありません。基礎学力の向上は日本および各国の教育において今なお重要と言えます。
そこで、スプリックス教育財団では 基礎学力に着目 し、日本およびグローバルサウス各国の基礎学力と教育環境の把握を目的とする調査 を実施しました。この調査結果を基に、一方では「基礎学力先進国である日本」とグローバルサウス各国の違いを明らかにし、各国が進めるべき 教育政策の根拠となるデータ収集 を行います。また一方では、日本国内での「基礎学力の高低」と教育環境や意識を他国と比較することで、今後の日本における 基礎学力のボトムアップに向けた示唆 を得ることを目的とするものです。
なお、教育環境は子ども個人では構築しえないものであり、家庭や学校での影響が大きいものです。そのため、本調査では 保護者および学校教員へのアンケート も実施しました。基礎学力の指標としては、各学年に応じた基礎的な計算力の把握が可能である 国際基礎学力検定TOFAS を利用しました。対象学年は、小4・小5・中2・中3 です。調査は各国の有志の学校を通じて実施しています。
本報告は2026年4月から8月にかけて実施した 「国際基礎学力調査2026」 の結果の一部を速報としてご報告するものです。今後、国・学年・性別・計算力等で詳細な分析を進め、基礎学力の現状把握と改善に役立つ示唆が得られましたら順次ご報告を予定しています。
調査方法
| 調査テーマ | 国際基礎学力調査2026 |
| 調査時期 | 2026年4月 ~ 8月 |
| 調査対象国 | 日本、フィリピン、インドネシア、ベトナム、タイ、キルギス、ケニア、エジプト、モロッコ、ペルー (国の選定については「調査対象の選定について」参照) |
| 調査対象者 | 小学4年生、小学5年生、中学2年生、および中学3年生に相当する子ども (以下、小4、小5、中2、中3、あるいは小中学生)。 上記の保護者。上記の算数・数学を担当する学校の先生。 |
| 回収数 | 子ども:6,313人、保護者:3,163人、先生:136人。(2026年9月1日時点) 国別の回答数など詳細は調査結果(PDF)参照。 |
| 調査主体 | 公益財団法人スプリックス教育財団が株式会社スプリックスに委託して実施 |
| 調査方法 | 1学年あたり1~数校の学校および自宅での調査。 保護者と学校の先生の回答は任意。学校の先生は1校あたり0~数人程度の回答。 |
・一部の国では、小6・中1を対象に含んでいます。(小6:タイ、中1:インドネシア、モロッコ)
・本報告書の集計時点では、フィリピンとモロッコはTOFASの結果が未回収です。そのため、TOFASの結果には含まれません。
・図で使用している百分率(%)は小数第2位を四捨五入して算出しています。四捨五入の結果、数値の和が100.0にならない場合があります。
・本リリースに関する内容をご掲載の際は、必ず「スプリックス教育財団調べ」と明記してください。
注:調査対象の選定について
本調査は、株式会社スプリックスが実施した国際基礎学力検定TOFASを、調査時期の期間内に受験した者のうち、有志の学校を対象としています。そのため、基礎学力の向上に課題を感じている国を中心とした調査結果です。また、回答者はランダムに抽出されたものではありません。そのため、便宜上「国名」として記載していますが、特定の地域や学校の結果であることにご留意ください。
調査結果

本日発行した速報サマリで以下の内容をご報告しています。
第1章:計算力の実態
- 計算力の国別比較・学年別比較
- TOFASの学年別・分野別の正答率
- TOFASの正答率と解答率の関係
第2章:子どもの学習意識・習慣
- 計算方法と計算力の相関
- 授業でのICT機器の利用頻度
- 宿題の重要性とその理由
- 勉強に関する質問相手
第3章:保護者と子どもの意識・関わり方
- 保護者と子どもの「計算力は重要」の認識
- 保護者と子どもの計算力の自己評価
- テストへの保護者の対応
第4章:学校・先生の教育環境
- 学校内のICT端末・Wi-Fiの整備状況
- 宿題を課す頻度と、生徒が宿題を提出する頻度
- 教員研修の有無と参加頻度
グローバルサウス各国と日本双方において、基礎学力の現状把握と改善に役立つ示唆を得ることができるものです。ぜひご覧ください。結果報告PDFはこちら。
以下、一部内容を抜粋してご紹介します。
(1) 日本は8か国の中では計算力が高いグループに (付録p9)
日本含む8か国の小中学生 が、国際基礎学力検定TOFASの 計算テスト を受験しました(図1)。

日本は平均正答率が高く平均白紙率が低く、8か国の中では 解答速度も精度も比較的高い ことがわかりました。他の国は、解答速度も精度も比較的高い国(ベトナム、キルギス)、解答速度は遅くないが精度が比較的低い国(エジプト、インドネシア、タイ)、解答速度も遅く精度も比較的低い国(ケニア、ペルー)があることが見て取れます。(付録p9参照)
(2) 日本以外9か国の小中学生の1/3は「8+5」の暗算ができない (付録p10)
10か国の小中学生に「あなたは「8+5」をどうやって計算しますか?」 と質問しました(図2)。

日本の小中学生の68.0%が 「頭の中で答えがすぐにわかる」 と回答したのに対し、日本以外の9か国合計では40.3%に留まりました。一方で 「紙に書く」「指を使う」 など、暗算できていないという回答が日本では13.4%であるのに対し、日本以外の9か国合計では37.0%でした。日本以外の調査国の小中学生は、3人に1人が「8+5」の暗算ができていない ことがわかりました。
計算テストの結果と比較すると、「頭の中で答えがすぐにわかる」と回答した人の正答率は高い 傾向にあり(付録p10)、「繰り上がりのあるたし算が頭の中ですぐできる」というような計算の自動化の有無 が、計算テスト全体に及ぼす影響の高さが見受けられます。
(3) テストの後「何に取り組むべきか話し合う」保護者の子どもは計算力が高い傾向 (付録p17)
10か国の小中学生の保護者 に 「お子様が算数・数学のテストで良くない成績を取った時、どのように対応しますか?」 と質問しました。図3はその上位3項目について、子どもの計算テストの成績で TOFAS合格者(正答率80%以上)と 不合格者(80%未満)で比較した結果です。

上位3項目は、合格者でも不合格者でも 「次はできるよと励ます」「子どもが間違えた問題の解き方を教える」「次のテストのために何に取り組むべきか子どもと話し合う」 でした。ただし 「次のテストのために何に取り組むべきか子どもと話し合う」 は 合格者の割合が 約14ポイントも 高い 結果となりました。気持ちを鼓舞するよりも、具体的な対策を一緒に行う ことが計算テストの成績に関わってくる可能性があります。
(4) ICT端末の整備状況が不十分な国も (付録p11,p18)
児童・生徒が利用可能なICT端末の利用状況 について、10か国の小中学生と学校の先生 に質問しました(図4)。

まず、10か国の小中学生 に、「スマートフォン、タブレット、コンピュータを使う算数・数学の授業はどの程度ありますか。」 と質問しました。図4(a)はTOFAS受験結果未回収を除く8か国の子どもの計算テストの成績で TOFAS合格者(正答率80%以上)と 不合格者(80%未満)で比較した結果です。「全くない」 と答えた生徒は、合格者では17.5%に対して不合格者では32.8%と 大きな差 がありました。

10か国の小中学校の先生 には 「あなたの学校では、児童・生徒が授業で使用できるコンピュータやタブレット端末は配備されていますか?」 と質問しました(図4(b))。日本においては、回答数が少ないので参考値ながら、全ての先生が「児童・生徒が一人一台使える端末がある」 と回答しました(付録p18参照)。一方、日本以外の9か国合計 では「一人一台ある」は14.6%にとどまり、「共用の端末」が62.3%、 「使える端末が一切無い」という回答が23.1%に上りました。
なお本質問は、当調査を小中学生に実施した学校の先生に任意で回答いただいています。割合が必ずしも国の整備状況を示すわけではないことにご留意ください。
まとめ
公益財団法人スプリックス教育財団では、「国際基礎学力調査2026」 を実施しました。その結果、日本の教育水準が個人・家庭・学校において高い 一方で、グローバルサウスの中には、子ども自身・家庭環境・学校設備それぞれに課題を抱えている国 も少なくないことがわかりました。簡単な繰り上がり計算を「指や紙」を使っており、基礎的な計算が身についていない子ども。子どもの勉強を応援しているが、具体的な解決に至っていない保護者。ICT端末などの設備が進んでいない学校などが、少なからず存在します。
一方で 日本が理想的な教育環境かと言うと、そうとも言い切れない 部分があります。計算テストの正答率は8か国で比較しても飛び抜けているわけではありません。分野によっては正答率が8割に満たない分野もあります(付録p7-8参照)。「8+5」の答えがぱっと思い浮かばない生徒も3割程度存在します。ICT端末は整備されていても、半数以上の生徒は算数・数学の授業ではほとんど利用していないようです(付録p11参照)。
各調査の質問の詳細や分析条件等については、結果報告PDFをご参照ください。
当調査の結果全容については時間をかけて詳細な分析を進め、今後順次ご報告予定です。具体的にどういった要素が計算力の向上に貢献しているのか。子ども本人が、家庭が、学校が、そして社会が、何を取り組んでいく必要があるのか。スプリックス教育財団では、計算テストの結果との集計も踏まえて、基礎学力の向上に必要な知見を集めてまいります。
補足:計算テストの内容
本調査は、児童・生徒は学校の教室において、国際基礎学力検定TOFASの計算テストを受験しました。国際基礎学力検定TOFASは株式会社スプリックスが提供する国際的なオンライン検定試験です。試験時間は40分、合格ラインは正答率80%に設定されています。
TOFASは受験する学年・レベルによって問題数や難易度が異なりますが、出題される問題は、学年に応じた基礎的な計算問題です。例えば、小学4年生では「32×3」、中学2年生では「(5x−9)−(−x−4)」といった内容が含まれます。
TOFAS(国際基礎学力検定)の詳細は下記よりご確認ください。